ホリスティックの情報誌に「皮膚疾患の心理療法(森田療法)」という投稿がありました。
その昔、京都で森田療法を体験したことがあったので、内容を読み進めるにつれて、遥か昔の記憶が少しずつ思い起こされました。
今回の投稿者は皮膚科のドクターで臨床心理士でもある方です。
様々な種類がある痒みを伴う皮膚疾患ですが、皮膚は目に見えるため症状が悪化して長期化してくると、ときにうつ気味になったり、対人不安や恐れから引きこもりがちになったりとQOL(生活の質)を低下させてしまいがちです。
投稿者のドクターは皮膚疾患の治療に森田療法を導入しているそうです。その理由は、森田療法の創始者である森田正馬が「一般の身体の気質的な病であっても、その慢性になったものは、ほとんど神経質の病的心理を加えていないものはない。治りにくくなった症状も森田療法を行って神経症の症状を取り除いてやれば、器質的疾患の症状のみとなり患者の苦悩は驚くほど和らぐ」と言っていて、皮膚疾患についても例外ではないと考えたからだそうです。
痒みや痛み、皮膚の汚さなどを嫌悪する気持ちが強かったり、掻いたり、たたいたりなどの行為そのものがストレスの対処行動になっている場合は、その行為自体に心理的依存が生まれ、意識では掻くのをやめようと思っても、なかなかやめられないという悪循環も起こると筆者は言っています。こういう悪循環状態を森田は「精神交互作用」と呼びました。
症状が悪化し、慢性化したり、一時的に良くなってもすぐに再発するような場合は、心理的な要因の存在の可能性ありと考え、治療に「あるがままの生き方の指導」、すなわち森田療法を導入しているそうです。
森田療法とは「すべてはあるべきようにある、逆らわず、ありのままを受け入れる生き方、すなわちあるがままの生き方が大事である」という考え方です。
<特色>
・他の西洋的心理療法と違って、不安を取り除くことを目標にしない。
・気持ち、感情は自分の意志では変えられないので、とりあえずそのままにしておく。
・今ここでの行動は自分の意志で変えられるので、今やるべきこと、必要なことをやっていく。
・行動が変われば心のありかたが変わる。
筆者は、なかなか改善、解消されない皮膚疾患に苦しむ患者さんは、いつのまにか自分の症状やそこから生まれる気分に執着した自己中心的な生き方になっていると…
そういう患者さんに、森田療法の生き方を指導しているそうです。
具体的には、どうしょうもない痒みや症状の悪化状態にあり、不安や絶望感、恥ずかしさなどの感情に直面していても、そういう思いはそのままに、さりげなく日々の生活を続けていくようにとアドバイスをしているようです。
患者さんが「あるがままの生き方」を受け入れていくにつれて、症状の改善がしばしば見られるのを診療の中で経験しているそうです。
この投稿を読んで、本当に久しぶりに森田療法のことに思いを馳せることができました。
森田療法はもともと精神疾患の治療に有効とされてきたものですが、今回の皮膚疾患だけでなく、不安や葛藤を抱えながらあらゆる心身の問題に直面している人たちにも活用できる治療方法であることを実感しました。